アイリス・ジョハンセンの新刊。前作が出たのが確か・・・一昨年の夏だっけ?間開けすぎでしょう〜(^^;)
考古学者のエルスペスは、かつてメキシコに存在した古代都市カンタランに行くべく、カンタランの場所を
知っているというドミニクの元を訪れて案内を頼んだ。お尋ね者のドミニクは断るが、ある事情からエルス
ペスを連れて故郷のキララに戻る事になり、やがて二人は結ばれるが、ドミニクの身に危険が迫って・・・。
昨年出た単発作品が不発だったせいか、やや低めのテンションで読み始めたのですが(笑)、新鮮味を
感じつつ、ジョハンセンならではのカラーが出ていて、このシリーズは外さないな〜と実感。面白かったです。
ヒロインのエルスペスは身寄りの無い考古学者。伝説の古代都市カンタランの場所を知っているパトリック
の元を訪ね、カンタランへの案内を頼みます。このエルスペスですが、ジョハンセンのヒロインにしては珍しい
と言えるかな〜。性格的には穏やかで控えめな感じだけれど、他人の痛みに敏感で繊細な一面に対して
自分が正しいと信じる事を主張出来る頑固さがあるのが良いし、ドミニクの気持ちに気がつかない鈍感
振りが可愛かったりも。内心では自信が無くて不安を抱えながらも、そんな自分を何とか奮い立たせて強
く出ようとする姿に(過去のジョハンセン作品のヒロインズに見られる)他人を拒むようなそっけなさでは無く、
純粋に自力で頑張ろうとするひたむきさが感じられるのも○。またシルヴァーに見せる優しさやドミニクに対
する率直でどっしりとした愛情を交えつつ、エルスペスが精神的に逞しくなっていく様も手堅く描かれていた
と思います。最後の肝っ玉の据わった行動も好感触で、終始無理が無く、素直に描かれたヒロインでした。
ヒーローのドミニクは赦免されたお訊ね者ですが、未だに殺し屋に狙われている為、故郷を離れてギャンブ
ラーとして生活しています。冷笑的で粗野に振舞う一方で心の中では孤独感やキララへの思いを秘めて
いて、ジョハンセンのヒーローらしい傲慢さもアリだったな〜。大切な人達を傷つけないようにとあえて距離
を置こうとするスタンス自体は切ないのですが、自分から遠ざけようとする一方でどんな時でもエルスペス
を守ろうとする強い意志や思いやりがあるんですよね。でも悶々とするドミニクの胸の内には思わずニンマリ
とさせられたり(笑)故郷へ戻って以降はドミニクのキャラがこう・・・生きてくると言うか、存在感が増してくる
感じで、葛藤を乗り越えた後のエルスペスへのメロメロな愛情や崇拝の注ぎっぷりはとりわけ好印象かな。
既刊に多い、押せ押せ一辺倒のヒーローとはまた違う、ドミニクにはドミニクの良さがちゃんとありましたね。
そして脇役陣ですが、シルヴァーは勝気なキャラで目立っていましたが、生い立ち故にディレイニィ家から
受け入れてもらえず、わざと突っ張った態度を取る姿は痛々しくもあり、正反対なエルスペスのキャラとの
対照も○。続いてパトリックは若くてお茶目なキャラや悪戯っ子的な言動からは窺えない部分があったり
で、ライジング・スターとの関係を通して、中々興味深く映りました。あと白人の世界で生きようとしても
結局は受け入れて貰えず、最終的には自分の存在意義を失ってしまったライジング・スターにはとっても
やるせなくなったな〜。中盤過ぎあたりからメインのロマンスと並行しながら、苦く切なく読ませましたね。
キララに滞在する事になったエルスペスとドミニクは、ある晩ドミニクを狙う殺し屋の策略によって関係を
持ってしまった結果結婚する事になり、式の最中にドミニクが襲われながらも二人はカンタランへ向けて
旅に出ます。前半はどちらかと言うとスローに流れていく感じでしょうか。大きなエピソードを挟みつつも、
ヒーローがガンガンと攻めるタイプでは無いせいか(笑)、展開的にはゆったりとしているように思えたかな。
アドベンチャー要素は後半過ぎになって一気に盛り上がってきますが、ページ的に不足する事も無く、
キャラ達の配置も確か。しっかりと中身が詰まった内容にまとまっていましたね。(私的には)キャラが強
烈に立つとか強い魅力で引っ張る程では無いけれど、細やかに行き届いた筆致とエルスペスやドミニク、
そして脇役達も含めた各々の心模様の明確な描出は特筆ものだなあ〜とも。良く出来た一冊でした。
今後の翻訳の予定は不明ですが、また忘れた頃にやってくるのかな〜(笑)ジョハンセン名義の作品が
あと2作あって、ケイ・フーパーとフェイリン・プレストンの作品が合計8作。完訳するのはいつでしょう(^^;)
- 2008/07/15(火) 23:43:02|
- 二見書房|
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