文春さんの放置疑惑から救われたような(笑)カレン・ローズの新刊。何はともあれ、嬉しい刊行です♪
シカゴでDVの被害者のシェルターを運営するデイナは、ある晩セキュリティ・コンサルタントのイーサンと
知り合い、自分の職業を伏せたまま付き合いを始めた。一方イーサンは、友人夫妻の誘拐された息子
を追ってシカゴへ辿り着き、捜索を続けていたが、防犯ビデオに誘拐犯と一緒に映るデイナを発見して・・・。
求めるものはこれ!と思わせる充実振りでしたね〜。緻密に練られたサスペンスとしっとりと優しいロマンス
のバランス感が抜群で、キャラ形成も厚くて巧み。突き抜けるような勢いと面白さで一気読みでした(^^)
ヒロインのデイナは、DV被害者を受け入れるシェルターの運営者。自らもDVの被害者で、重い過去を贖う
かの如く、持てる時間やお金の全てを注ぎ込みながら、人助けを生きがいとしていますが、ロマサスにありがち
な、やたらと使命感に振り回されてしまっているタイプでは無く、肩に入っている力も程ほどだし、キャラとして
無理が無いなあ〜といった感じで、辛い状況下においても、頭を働かせながら前向きに踏ん張る姿が好感
度大(^^)責任感が強い分だけ罪悪感に苦しんだりするけれど、ちゃんと周囲の言う事に耳を傾ける事が
出来て、聞き上手な一方で話し下手だったりと不器用ながらも、イーサンに対してマイペースに、正直に心
を開いていく姿も自然な感じでとっても良かったです(^^)また他者の痛みに敏感で、傷ついている人を助け
たい と思うデイナの意思や心情を丁寧な描出で読ませつつ、温かみや聡明さを感じさせる輪郭に、人間的
な強さと弱さが細やかに投影されているあたりに精妙さが顕著に見て取れるなあ〜とも。気持ちの良い強さ
を持つ、素敵なヒロインでしたね。キャロラインやミーアといった素敵な友人がいるのもポイント高しだったり。
ヒーローのイーサンは元海兵隊員で、現在はセキュリティ・コンサルタントの会社を経営していますが、かつて
戦場で親友を失った過去に苦しんでいます。このイーサンですが、「誰かに見られてる」のエイブと同じく、
真面目で誠実。デイナへの態度からは包容力や思いやりがちゃんと感じられるし、相手にも自分にも率直
で、落ち着きのあるスタンスが素敵なのですが、デイヴィッドを前にして、メラメラっとした時にはニンマリしたり
も(笑)ユーモアのセンスも光りつつ、真摯な物腰は安心感を与えてくれますね。まさに申し分無しです(^^)
ロマンス面は、ほとんど運命的とも言える一目惚れから始まりますが、いきなり突っ走ったりせずに、まずは
二人に会話をさせる事によって、相手を知っていく過程に、性的なテンションを絡めつつ、各々の心情面にも
描写が行き届いた内容で○。時間こそ一週間足らずですが、内面の触れ合いに焦点が置かれる中、理解
や共感がじっくりと深まっていく印象で、一歩一歩を大事に、着実に進んでいくような感じが良かったかな。
そして個性が立つ脇役陣の魅力も、この作品の特筆ポイントと言えるのでは(^^)基本的に癖が無く、さっ
ぱりとしていて、人の良さが滲み出るキャラが多いんですよね。デイナを囲んでのキャロラインとミーアの友情
関係は、気が置けないと同時に相手への愛情や気遣いがしかと感じられるし、ありふれた表現になって
しまいますが、二人とも性格が良い。ミーアは「誰かに〜」で既に好印象を残していましたが、二人が各々
ヒロインとなっている一作目、六作目への期待が益々高まりますね。 ミーアと一緒に事件を担当するエイブ
は相変わらずの好漢振りで、クリスティンとの間に生まれた女の子の良きパパな表情も素敵でした(^^)ちら
っと出てきたジュリアとジャックの関係にもニンマリ。これはスピンならではのお楽しみですね♪クレイと保安官
のルーの関係も気になる所だったり(笑)そしてとにかく凄いのが、悪辣非道を極めた犯人のスーでしょう(爆)
性的虐待の被害者である一方で利己的に殺人を繰り返す、スーという人物像が容赦無く、ひたすら残虐
に際立つ様はまさに圧巻。またスーというインパクトのあるキャラをフルに活かした展開で事件が描かれて
いて、その上手さには唸る事しかりですね(笑)そして捜査陣営には、イーサン&クレイの 私立探偵に
シカゴ市警、メリーランド州の保安官、ウェスト・ヴァージニア州の刑事の面々が集まりますが、 ありがちな
エゴや縄張り意識がぶつかり合う事も無いし、各々が協力し合いながら、事件解決に気持ちを傾けている
事やプロらしい思考や視点、動きが◎。曖昧なロマサスとは一線を画している、冴えも見事な内容でした。
長距離バスの停留所の防犯ビデオに、アレックを連れた犯人のスーとデイナが一緒に映っている事を発見
したイーサンは、デイナのシェルターにスーが潜伏している事を突き止めますが、既にスーはアレックとイーヴィ
を人質にして逃走し、そしてシカゴにやって来たアレックの母親によって、スーとアレックの関係が明かされます。
まずスーの復讐劇の真相が意外。そう来るか〜と驚きました(笑)単に意外性を狙っただけで無く、背景が
きちんとしている事が、納得性を深めている要因の一つかな。シェルターから出た女性が元夫に殺害された
事実を持ってくる事によって、デイナやミーアの懸念がそちらに向かうあたりも上手いし、独壇場とも言える
状況下において、スーが計算外の事態に対応しつつも、徐々に足元をすくわれていく様が巧妙に描き出さ
れていて、シェルターに潜伏する最初から最後まで、精緻なプロットに感服させられましたね。一つ一つの
要素を生真面目に盛り込みつつもペースは良好で、登場するキャラ各々がストーリー上でちゃんと役割
を果たしているのも無駄が無くて○。人質になりながらも、何とか生き抜こうとするアレックとイーヴィの姿は
あっぱれだし、ラストの携帯電話の使い方に至っては痛快そのものだったなあ〜(^^)また共に虐待の被害
者でありながらも、対極の生き方をしているデイナとスーの姿を通して浮かび上がるものも興味深く読み
ました。キャラ、ストーリーがぶれる事無く、緊密に締まった面白さでがっつりと読ませる秀逸作品です。
いや〜、大満足ですね。この質の高さは凄い!(^^)某様がローズホリックになられるのも納得(笑)
エイブの弟エイダンがヒーローになる、五作目「You Can't Hide」の翻訳は確定しているとの事ですが、
キャロラインがヒロインでデイナも登場する一作目の「Don't Tell」 や二作目の「Have You Seen
Her?」 も是非読みたいですね〜。ミーアがヒロインの六作目「Count To Ten」では、デイナ&イーサン
が再登場するみたいですし、最新刊の「Die For Me」も含めて、翻訳される事を願うばかりです(^^)
- 2007/09/27(木) 20:37:10|
- 早川書房|
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