Sweet 'n Lowdown Style-Zakki

海外のロマンス小説をメインとした感想雑記です。

あなただけに真実を

無性に面白いサスペンスを読みたくなったので、満を持してのL・ガードナー。ようやく着手です(^^)

マサチューセッツ州警察の特殊部隊のスナイパーのボビーは、男が銃を持って暴れているとの
連絡を受けて現場に駆けつけた。男が妻を撃つつもりだと判断したボビーは男を射殺したが、妻の
キャサリンはどこか様子がおかしく、また男が判事の息子だった事からボビーは訴えられて・・・。

唸らせる程の上手さ、面白さ。優れた面に事欠かないこの作品ですが、まず特筆したいのがキャラ
ですね〜。主人公のボビーは州警察のスナイパーで、銃を持った男が妻と子供を脅していると連絡
を受けます。部隊の他のメンバーよりも早く現場に駆けつけた結果、ボビーが男を射殺して事件は
終結しますが、職務とは言え、人命を奪ったという事実に対する苦しみに始まり、事件の展開と共に
過去に繋がりのある、ボビーの胸の奥底に抱えた深い感情の襞が次第に浮き彫りになっていく流れ
が、静かで淡々としながらも、雄弁と言える力強さと痛いくらいの鋭さをもって描かれていて、その
深さは圧倒的。いつかは結婚をと意識する恋人が居て、老婦人に破格の値段で部屋を提供し続け
ているというエピソードにホッとさせる一方で切羽詰った状況に募っていく焦燥感や癒える事の無い
暗い感情がずっしりと伝わってきて、読ませるだけで無く、翳が差すようなボビーの人物像と孤独感
に惹き付けられたなあ〜と。複雑さの中に哀切を滲ませる姿には感じ入るものがありましたね。

夫が銃を持って暴れていると通報したキャサリンは、12歳の時に小児性愛者に誘拐され、28日後に
奇跡的に発見された過去を持っています。当然ながらこの事件がキャサリンの人格に大きな翳を
落としていますが、このキャサリンのキャラ造形がまた抜群。リサ・ガードナーが描く犯人像は、
行為の残虐性だけで無く、精神面の異常性をより深く描出する事によってその恐ろしさが鮮明に
なるのが常ですが、身体を利用して相手を操る事も厭わない、したたかな悪女としての顔を持つ
反面、キャサリンの中に、暗い穴の中で傷つけられ続けたままの少女の部分が根深く残っていて、
その危ういバランス感の描写がとにかく絶妙で、ぞくっとさせると同時に痛ましいものを覚えさせる
あたりが圧巻でしたね〜。今回キャサリンを誘拐した犯人が出所しますが、残虐非道な悪人とは
また質の違う恐ろしさと同時に哀しさを宿すキャサリンは、格別に印象深いキャラでしたね。

脇役達の中では、キャラに妙味のきいた誘拐犯やボビーの元恋人だという女刑事のD・Dの存在が
光っていましたね。次回作での再登場に期待!そして大好きなJ・Tの再登場は嬉しかったなあ〜。
ベケットから10年が経っているとは・・・とか感慨に耽ったりも(笑)幸せそうで良かったです〜(^^)

息子を射殺された判事夫妻が、キャサリンの意図に操られたとしてボビーを告訴する事にし、また
発育不全で入退院を繰り返しているキャサリンの息子の親権を奪うべく動き始めますが、判事夫妻
に呼び出されたボビーは、キャサリンに撃つように仕向けられたと証言すれば、告訴を取り下げる
という話を持ちかけられます。そんな中過去にキャサリンを誘拐した犯人が出所し、まずキャサリン
の息子の担当医が殺害されますが、スピード感溢れるストーリーは、ボビーと精神科医の対話、
キャサリンの息子の病気、親権を奪おうとする判事夫妻、出所した誘拐犯等登場キャラと個々の
エピソードを巧緻に絡めながらよどみ無く展開していき、無駄なものが一切無く、先が読めない。
また周囲から孤立していくボビーとキャサリンが共に抱える暗影が映し出される様は素晴らしく、
緊迫感の途切れない事件面を軸にキャラの感情面を緻密に描き込む事によって、ドラマ性の高さを
強く感じさせる内容に仕上がっているだけで無く、骨太なストーリーの中に漂う深遠さに、ただただ
魅せられました。パワフルかつ高い筆致で一気に読ませる秀逸な作品。続編が楽しみです(^^)

「Hide」が続編として刊行済みですが、今後ボビーを主人公にした作品がシリーズ化されるとなる
と凄く嬉しいなあ〜(^^)「Hide」の翻訳も楽しみだけれど、その前にクインシーのシリーズかな?

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前野 律

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  1. 2007/06/14(木) 22:44:01|
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