Sweet 'n Lowdown Style-Zakki

海外のロマンス小説をメインとした感想雑記です。

虚栄

ロバート・B・パーカーの「サニー・ランドール・シリーズ」の新刊。「虚栄」はシリーズの5作目で、
別シリーズの主人公でもあるジェッシィ・ストーンが登場する競演作品です。二つのシリーズを
読んだ事が無くても、問題無く読める内容でしたが、更にシリーズを抱え込む事になるとは・・(^^;)

私立探偵のサニーは、ボストン近郊の島に住む映画プロデューサーから、女優のエリンを護衛する
仕事を依頼された。大リーグの球団のオーナーでもあるプロデューサーは、エリンを選手として自分
のチームに入れさせ、話題にしようと目論んでいたが、そんな中エリンの付き人が殺害されて・・・。

主人公のサニーは元警官の私立探偵。タフな仕事に就いている女性にしては、肩にがっちりと力が
入っているわけでも無く、日頃読んでいるロマンス本ではあまりお目にかかれない(笑)穏やかさや
落ち着き振りが素敵でしたね〜(^^)ファッションやむだ毛の処理等のちょっとしたエピソードから
サニーの女性らしさや女心が窺えるあたりに微笑ましさを感じつつ、再婚してしまった元夫への簡単
には割り切れない想いやジェッシイとの関係を前に思慮する姿を通して、サニーというキャラが持つ
人間味や機微が、静かな風趣と共に浮かび上がる様は、シンプルながらも、しっかりと響いて残る
ものがあったなあ〜。聞き上手で、自分の考えだけに縛られないスマート振りや事件面にしろ私生
活にしろ、一つ一つマイペースに事を進めようとする姿勢には真摯さが見えて、好印象でした(^^)

別シリーズで主役を張っている警察署長のジェッシイですが、ロスで刑事をしていた際に妻の浮気
が原因で離婚し、その後お酒に溺れて警察を解雇されたという過去の持ち主。現在は元妻との復縁
を考えていますが、上手くいかずにいます。このジェッシイとサニーがよく似ているんですよね〜。
どちらも離婚相手に愛情を残しているという背景だけで無く、温度感や物事を見る時の目の高さも
同じなので、二人の呼吸が自然に合うしっくり感が心地良かったです(^^)サニーに惹かれながらも
元妻の事を容易には断ち切れないという心情には、苦みや難しさが垣間見れると同時に、サニーが
ジェッシイのそんな気持ちを理解し、尊重するのが何とも大人で良いんだなあ〜(笑)サニーと同様
に自分の気持ちに自然に向き合おうとするジェッシイの姿には、すねに傷を持つ者の孤独感がほの
かに漂う感じでした。スペンサーの方が言葉数は多いけど、通じる面があるなあ〜とも。物静かな
一方で大胆な面を持つ人情派といったキャラかな〜。主役としてのジェッシイが楽しみです♪

脇役では、スペンサーの恋人のスーザンが出ていたのが、まず嬉しかったですね〜(^^)あとは
サニーのわんこのロージーの存在感もあなどれませんが(笑)、元夫のおじでマフィアの一員
なのに、サニーには思いやりをかけるフェリックスや友人のスパイクもそれぞれが良い持ち味を
出していました。元夫に子供が出来た事を知って落ち込むサニーにスパイクがかけた言葉は、
励ますでも無く、真実を容赦無くついたものだったので、寂寥感と共に印象深く残ったなあ〜。

付き人が殺害され、取り乱したエリンに犯人を捕まえて欲しいと頼まれたサニーは、ジェッシイと
協力しつつ、友人や知り合いを通じて情報を集めますが、徐々にエリンと付き人の関係や過去が
明らかになり、更にエリンの主演映画の制作費に対する投資の一件に繋がっていきます。サニーと
ジェッシイが事実を追っていく過程は、事件に関係のある人間の背景を地道に当たるという、オーソ
ドックスとも言える流れで展開していきますが、二人が事件に向ける視点が人間的に、そして味わい
深く描き出されていたし、展開の切り替えもシンプルかつスムーズ。事実がきちんと繋がっていく
のも気持ちが良いし、二人のロマンスやサニーと脇役達の絡み等全体的にバランスが取れた内容
で、人情を前面に出した結末まで、始終風情を出しながら、手堅くまとめられていたと思います。

簡潔な切り口から浮き彫りになる、心の機微や情感で深く読ませる良作でした。「初秋」もそうだった
けれど、人間味あるキャラが魅力的だし、読後は温かさや切なさが入り混じった情緒がしみじみと
残るんですよね〜。今後もこの読後感を求めて、パーカーのシリーズを読んでいきたいですね(^^)

虚栄 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 1-41 サニー・ランドル・シリーズ)虚栄 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 1-41 サニー・ランドル・シリーズ)
奥村 章子

早川書房 2007-04
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  1. 2007/06/03(日) 23:59:44|
  2. 早川書房|
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