Sweet 'n Lowdown Style-Zakki

海外のロマンス小説をメインとした感想雑記です。

暗闇に抱かれて

カレン・ローズの2月の新刊。「誰かに〜」にも登場したエイダンのお話です。やっとこさ読了しました(^^)

精神科医のテスは、受け持ちの患者達が何者かによって自殺に追い込まれる事件に巻き込まれてしま
った。一時はテスが容疑者と見なされる中、担当刑事のエイダンの捜査によって疑いが晴れた為、犯人を
突き止めるべくテスは捜査に協力をするが、やがて犯人はテスの知り合いや顔見知りに狙いを定めて・・・。

圧倒的な面白さで読ませた前作に続いて、今作もまた読み応え十分な内容でしたね。緻密に練ったプロ
ット、真面目なロマンス、速い話運び、そしてどっしりとした重量感。やっぱりローズは外さないんだな〜(^^)
以下ネタばれアリの内容になっておりますので、未読の方はスルーかバックされる事をお薦め致します。

ヒロインのテスは精神科医。子供や警官が殺害された事件の裁判で、被告人に責任能力が無かった事
を証言した為に警察内部から反感を買っていますが、落ち着きのある物腰は精神科医らしくて、スマート
で上品な雰囲気を醸し出しつつも、どこか寂しげな感じや脆さを垣間見せたりもしましたね〜。患者の事
を親身に思いやる優しさがあるし、自分と関わった人間が次々に殺害されてしまう中、気丈に立ち向かう
スタンスやピンチに陥った時の立ち回り振りも印象が良く、エイダンとの関係で見せる率直さも含めて、ロー
ズのヒロインらしく優等生的なタイプと言えるかな(^^)また精神科医としての立場の難しさとかもテスの心
情面と共に確かに描かれていていましたね。あと犯人が身近にいた事にテスが気がつかなかった事に関して
は、秘書の件もそうだけれど、テスの人の良さ故と受け止めました。病んでいた犯人の事を気遣う言葉とか
も決して出来すぎとか嫌味には映らないし、人間味を出しながら、普通の温度感を感じさせるあたりも自
然だなあ〜と。強さと弱さのバランスが無理無く取れていて、キャラ立ちも申し分無しのヒロインでした(^^)

ヒーローのエイダンは刑事で、子供と警官が殺害された事件に関わっていた為、テスに対して反感を抱いて
います。エイダンはエイブに比べるとちょっと尖っている感じかな〜。勿論真面目な正義漢ではあるけれど、
割と感情に左右されやすい印象ではありましたね。テスに対しての誤解が解けた後の独占欲&保護欲丸
出しの態度やテスを擁護するクリスティンとのやり取りにはニンマリとさせられたりも(笑)学歴とか上流階級
にコンプレックスを持っている為にテスを見る目がちょっと曇ったりするけれど、基本的にはメロメロ君で○。
レイチェルに対する心配性で優しいお兄ちゃん振りも良かったし、刑事であると同時に一人の人間としての
エイダンの姿を内包しているものを出しながら読ませていく中、私的にはエイブやイーサンの方が好みでは
ありますが(笑)、正統派の魅力にややクセがあると言うか、難しさを含んだ個性もまた味がありましたね。

脇役のメンバー達ですが、まずエイブ&クリスティンは相変わらず幸せそうで何よりだなあ〜。クリスティン
とエイダンのやり取りにあえて加勢しない(笑)エイブには笑いを誘われつつ、他レーガン家の人々の登
場もアリでした。今回が初登場となるテスの兄のヴィトは存在感たっぷりで、長男では無いけれど、兄貴
スキーには要チェックなキャラでございました。更にエイダンの相棒のマーフィー、スピネリ警部補、ミーア、
ジャックとジュリア等シカゴ警察の面々が揃い踏み状態でしたが、ローズ作品の特色の一つでもある警察
側の真摯な働き振りは今作も健在でした。そして特ダネを狙う女性記者の使い方は上手いだけで無く、
野心剥き出しで、常識的な判断や人として大切な事が欠落している様は印象強いものを感じましたね。

テスの患者や顔見知りの人々が次々と殺害されていき、警察は手がかりを元に事件に関係していた人間
を洗い出すものの、犯人逮捕には至らない中、テスはマスコミを利用して犯人を挑発し、自分を狙わせる
ように仕向けます。まずテスとエイダンのロマンスは、ストレートではあるけれど、徐々に自分の胸の内をさら
け出して理解が深まっていく感じかな〜。事件に追われる忙しなさの中において、感情のやり取りも着実
に盛り込んであり、自分の事を内に閉じ込めがちなエイダンに対してテスの態度がはっきりとしているので、
釣り合いが取れているように思えました。サスペンス面は、6日間の間にとにかく人が殺害されていきますが、
犯人は割りと早い段階でわかったので、私的に意外性は無かったのですが、捜査陣がどう犯人を探し出
すのかという部分に関心が高まりましたね。アップテンポな流れの中に伏線を敷きつつ、複数の要素を
巧妙に交錯させて展開していく中、個々の要素や事実、捜査を読んで先回りする犯人と追いかける警
察側の動きの一つ一つが丁寧に描き込まれていて、プロットも精巧。ポイントを押さえて勢いよく読ませて
いく内容でした。ただ犯人が明らかになる直前あたりで微妙に息切れを感じると同時に満点作品だった
前作に比べてしまうと見劣りする感はあったかな。それでもキャラの描写と配置の上手さやストーリー展開
の妙、そして細かく描き込まれたエピソードが一体となった水準の高さはお見事。優良作品でした(^^)

さて後書きには今後の翻訳情報について何一つ触れられていませんでしたが(笑)、ミーアがヒロインになる
「Count To Ten」、テスの兄ヴィトの作品「Die For Me」、そして来月に発表予定の「Scream For Me」
と続いているので、是非出して頂きたいです。クレンツも含めてどうなっているんでしょうね〜>ハヤカワさん

暗闇に抱かれて (ハヤカワ・ミステリ文庫 ロ 5-2) (ハヤカワ・ミステリ文庫 ロ 5-2)暗闇に抱かれて (ハヤカワ・ミステリ文庫 ロ 5-2) (ハヤカワ・ミステリ文庫 ロ 5-2)
藤田 佳澄

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  1. 2008/04/04(金) 00:00:48|
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復讐の瞳

文春さんの放置疑惑から救われたような(笑)カレン・ローズの新刊。何はともあれ、嬉しい刊行です♪

シカゴでDVの被害者のシェルターを運営するデイナは、ある晩セキュリティ・コンサルタントのイーサンと
知り合い、自分の職業を伏せたまま付き合いを始めた。一方イーサンは、友人夫妻の誘拐された息子
を追ってシカゴへ辿り着き、捜索を続けていたが、防犯ビデオに誘拐犯と一緒に映るデイナを発見して・・・。

求めるものはこれ!と思わせる充実振りでしたね〜。緻密に練られたサスペンスとしっとりと優しいロマンス
のバランス感が抜群で、キャラ形成も厚くて巧み。突き抜けるような勢いと面白さで一気読みでした(^^)

ヒロインのデイナは、DV被害者を受け入れるシェルターの運営者。自らもDVの被害者で、重い過去を贖う
かの如く、持てる時間やお金の全てを注ぎ込みながら、人助けを生きがいとしていますが、ロマサスにありがち
な、やたらと使命感に振り回されてしまっているタイプでは無く、肩に入っている力も程ほどだし、キャラとして
無理が無いなあ〜といった感じで、辛い状況下においても、頭を働かせながら前向きに踏ん張る姿が好感
度大(^^)責任感が強い分だけ罪悪感に苦しんだりするけれど、ちゃんと周囲の言う事に耳を傾ける事が
出来て、聞き上手な一方で話し下手だったりと不器用ながらも、イーサンに対してマイペースに、正直に心
を開いていく姿も自然な感じでとっても良かったです(^^)また他者の痛みに敏感で、傷ついている人を助け
たい と思うデイナの意思や心情を丁寧な描出で読ませつつ、温かみや聡明さを感じさせる輪郭に、人間的
な強さと弱さが細やかに投影されているあたりに精妙さが顕著に見て取れるなあ〜とも。気持ちの良い強さ
を持つ、素敵なヒロインでしたね。キャロラインやミーアといった素敵な友人がいるのもポイント高しだったり。

ヒーローのイーサンは元海兵隊員で、現在はセキュリティ・コンサルタントの会社を経営していますが、かつて
戦場で親友を失った過去に苦しんでいます。このイーサンですが、「誰かに見られてる」のエイブと同じく、
真面目で誠実。デイナへの態度からは包容力や思いやりがちゃんと感じられるし、相手にも自分にも率直
で、落ち着きのあるスタンスが素敵なのですが、デイヴィッドを前にして、メラメラっとした時にはニンマリしたり
も(笑)ユーモアのセンスも光りつつ、真摯な物腰は安心感を与えてくれますね。まさに申し分無しです(^^)

ロマンス面は、ほとんど運命的とも言える一目惚れから始まりますが、いきなり突っ走ったりせずに、まずは
二人に会話をさせる事によって、相手を知っていく過程に、性的なテンションを絡めつつ、各々の心情面にも
描写が行き届いた内容で○。時間こそ一週間足らずですが、内面の触れ合いに焦点が置かれる中、理解
や共感がじっくりと深まっていく印象で、一歩一歩を大事に、着実に進んでいくような感じが良かったかな。

そして個性が立つ脇役陣の魅力も、この作品の特筆ポイントと言えるのでは(^^)基本的に癖が無く、さっ
ぱりとしていて、人の良さが滲み出るキャラが多いんですよね。デイナを囲んでのキャロラインとミーアの友情
関係は、気が置けないと同時に相手への愛情や気遣いがしかと感じられるし、ありふれた表現になって
しまいますが、二人とも性格が良い。ミーアは「誰かに〜」で既に好印象を残していましたが、二人が各々
ヒロインとなっている一作目、六作目への期待が益々高まりますね。 ミーアと一緒に事件を担当するエイブ
は相変わらずの好漢振りで、クリスティンとの間に生まれた女の子の良きパパな表情も素敵でした(^^)ちら
っと出てきたジュリアとジャックの関係にもニンマリ。これはスピンならではのお楽しみですね♪クレイと保安官
のルーの関係も気になる所だったり(笑)そしてとにかく凄いのが、悪辣非道を極めた犯人のスーでしょう(爆)

性的虐待の被害者である一方で利己的に殺人を繰り返す、スーという人物像が容赦無く、ひたすら残虐
に際立つ様はまさに圧巻。またスーというインパクトのあるキャラをフルに活かした展開で事件が描かれて
いて、その上手さには唸る事しかりですね(笑)そして捜査陣営には、イーサン&クレイの 私立探偵に
シカゴ市警、メリーランド州の保安官、ウェスト・ヴァージニア州の刑事の面々が集まりますが、 ありがちな
エゴや縄張り意識がぶつかり合う事も無いし、各々が協力し合いながら、事件解決に気持ちを傾けている
事やプロらしい思考や視点、動きが◎。曖昧なロマサスとは一線を画している、冴えも見事な内容でした。

長距離バスの停留所の防犯ビデオに、アレックを連れた犯人のスーとデイナが一緒に映っている事を発見
したイーサンは、デイナのシェルターにスーが潜伏している事を突き止めますが、既にスーはアレックとイーヴィ
を人質にして逃走し、そしてシカゴにやって来たアレックの母親によって、スーとアレックの関係が明かされます。
まずスーの復讐劇の真相が意外。そう来るか〜と驚きました(笑)単に意外性を狙っただけで無く、背景が
きちんとしている事が、納得性を深めている要因の一つかな。シェルターから出た女性が元夫に殺害された
事実を持ってくる事によって、デイナやミーアの懸念がそちらに向かうあたりも上手いし、独壇場とも言える
状況下において、スーが計算外の事態に対応しつつも、徐々に足元をすくわれていく様が巧妙に描き出さ
れていて、シェルターに潜伏する最初から最後まで、精緻なプロットに感服させられましたね。一つ一つの
要素を生真面目に盛り込みつつもペースは良好で、登場するキャラ各々がストーリー上でちゃんと役割
を果たしているのも無駄が無くて○。人質になりながらも、何とか生き抜こうとするアレックとイーヴィの姿は
あっぱれだし、ラストの携帯電話の使い方に至っては痛快そのものだったなあ〜(^^)また共に虐待の被害
者でありながらも、対極の生き方をしているデイナとスーの姿を通して浮かび上がるものも興味深く読み
ました。キャラ、ストーリーがぶれる事無く、緊密に締まった面白さでがっつりと読ませる秀逸作品です。
いや〜、大満足ですね。この質の高さは凄い!(^^)某様がローズホリックになられるのも納得(笑)

エイブの弟エイダンがヒーローになる、五作目「You Can't Hide」の翻訳は確定しているとの事ですが、
キャロラインがヒロインでデイナも登場する一作目の「Don't Tell」 や二作目の「Have You Seen
Her?」 も是非読みたいですね〜。ミーアがヒロインの六作目「Count To Ten」では、デイナ&イーサン
が再登場するみたいですし、最新刊の「Die For Me」も含めて、翻訳される事を願うばかりです(^^)

復讐の瞳 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ロ 5-1) (ハヤカワ・ミステリ文庫 ロ 5-1)復讐の瞳 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ロ 5-1) (ハヤカワ・ミステリ文庫 ロ 5-1)
藤田 佳澄

早川書房 2007-09-20
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  1. 2007/09/27(木) 20:37:10|
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緑の瞳のアマリリス

Blogの新管理画面に慣れないです、ええ(苦笑)とりあえずジェイン・アン・クレンツの新刊をレビュー。

地球系惑星セント・へレンズに住むプリズム能力者のアマリリスは、「アイスマン」の異名を持つ トレント
から、 会社の情報を横流ししているスパイと仲介人の調査の補助を依頼され、一緒にパーティーに出席
した。スパイの一件は早急に片付いたが、会場である事が気になったアマリリスは調査を始めてしまい・・・。

今年になってクレンツ作品が連続して翻訳されている中、私的には当確作家なので、大抵は危なげ無く
楽しんで読めちゃうのですが、この作品も見事に当たり。申し分の無い面白さで一気読みでした(^^)

ヒロインのアマリリスは、人材派遣の会社に勤めるプリズムという能力集中者。設定がSFで場所がニュー・
シアトルだろうと、クレンツのヒロインは相変わらずでしたね(笑)結婚や家庭の結束が重んじられるセント・
へレンズで私生児として生まれ、伯父夫妻に引き取られるものの、世間からは冷たい目を向けられてきた
為に倫理観を絶対として、真面目に生きてきたアマリリスですが、しっかりとした意志や優しさがファニーな
雰囲気の中にしっくりと納まっていて、スマートで自然体なキャラがいつもながら良い感じなんですよね〜。
融通の利かない堅物と言われても、窮屈な感じがせず、洞察力が確かで一本芯が通っているのがクレンツ
のヒロインならではの個性なんだよな〜と再認識しつつ、一人でクラブに出向く際には、ルーカスが心配する
かも〜と留守電にメッセージを残しておく几帳面さが何気に好きだったり(^^)終始魅力が光っていました♪

ヒーローのルーカスは、「アイスマン」の異名を持つ超能力者で、妻と会社の共同経営者に裏切られた過去
があります。このルーカスもまた家族に恵まれなかった生い立ちや兄弟は無くとも、弟代わりの存在が居た
りとクレンツ・ヒーローズのルーツがしっかりと流れた(?)キャラで、クールに構えつつも、アマリリスのペース
に巻き込まれながらメロメロになっていく姿がとっても可愛かったです(^^)妻と共同経営者に騙された事や
スパイの一件からは人の良さとも言える隙が窺えるし、西諸島での事件の真相にあえて口をつぐむ優しさや
相手への思いやりも○。オスカー伯父とのバトル(笑)や麦わら桃のパイの下りも微笑ましかったなあ〜。
一匹狼として生きてきた不器用振りと共にルーカス側の感情面の動きが明確に読み取れるのが良かったし、
キャラの輪郭も力強くて、クレンツらしい妙味で色付いた個性が、抜群に立ったヒーローだったと思います(^^)

ルーカスの一件は片付いたものの、パーティー会場で強い超能力者とプリズムの存在を感じただけで無く、
恩師でもある大学教授に関する謎めいた電話を受けたアマリリスは、事故死とされた教授の死に疑問を抱き、
ルーカスと共に調査に乗り出す事になります。今作は設定がSFという事で、地球系惑星セント・へレンズの
ニュー・シアトルという街が舞台となっていましたが、セント・へレンズの歴史やカフェ茶マシーンや西諸島
ファッション等の小道具がユニークさに興が尽きない中、とりわけ結婚に関する世情は、アマリリスとルークの
現状に絡めながらユーモラスに盛り上げていて、小道具を始めとして、随所にクレンツ・テイストが見て取れる
あたりもおいしかったです(^^)また軽快に進んでいく流れにおいて、アマリリスとルーカスのコンビネーション
が小気味良く弾みを見せるし、互いの能力をリンクさせてのラブシーンは、独特の風合いを醸し出していて
印象的でしたね。そしてSFな背景とクレンツの特色が見事に融合したストーリーは、目新しいと同時に
安定した面白さが活きた内容で、筆のノリが顕著に感じられたりも〜。今年翻訳されたクレンツ作品の中
では、一番のお気に入りと言えるかな(^^)あとはスピンが順調に翻訳される事を願うばかりですね〜(^∧^)

さてスピンですが、「Zinnia」と「Orchid」。ヒーローズは「アマリリス」でもしっかりと存在感を感じさせたニック
とレイフという事で期待も高まりますが、ちゃんと翻訳してくれるんだろうなあ〜と信じたい(笑)>ハヤカワさん

緑の瞳のアマリリス (ハヤカワ文庫 SF ク 12-1) (ハヤカワ文庫 SF ク 12-1) (ハヤカワ文庫 SF ク 12-1)緑の瞳のアマリリス (ハヤカワ文庫 SF ク 12-1) (ハヤカワ文庫 SF ク 12-1) (ハヤカワ文庫 SF ク 12-1)
小菅久実 和爾 桃子

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  1. 2007/09/19(水) 21:28:00|
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虚栄

ロバート・B・パーカーの「サニー・ランドール・シリーズ」の新刊。「虚栄」はシリーズの5作目で、
別シリーズの主人公でもあるジェッシィ・ストーンが登場する競演作品です。二つのシリーズを
読んだ事が無くても、問題無く読める内容でしたが、更にシリーズを抱え込む事になるとは・・(^^;)

私立探偵のサニーは、ボストン近郊の島に住む映画プロデューサーから、女優のエリンを護衛する
仕事を依頼された。大リーグの球団のオーナーでもあるプロデューサーは、エリンを選手として自分
のチームに入れさせ、話題にしようと目論んでいたが、そんな中エリンの付き人が殺害されて・・・。

主人公のサニーは元警官の私立探偵。タフな仕事に就いている女性にしては、肩にがっちりと力が
入っているわけでも無く、日頃読んでいるロマンス本ではあまりお目にかかれない(笑)穏やかさや
落ち着き振りが素敵でしたね〜(^^)ファッションやむだ毛の処理等のちょっとしたエピソードから
サニーの女性らしさや女心が窺えるあたりに微笑ましさを感じつつ、再婚してしまった元夫への簡単
には割り切れない想いやジェッシイとの関係を前に思慮する姿を通して、サニーというキャラが持つ
人間味や機微が、静かな風趣と共に浮かび上がる様は、シンプルながらも、しっかりと響いて残る
ものがあったなあ〜。聞き上手で、自分の考えだけに縛られないスマート振りや事件面にしろ私生
活にしろ、一つ一つマイペースに事を進めようとする姿勢には真摯さが見えて、好印象でした(^^)

別シリーズで主役を張っている警察署長のジェッシイですが、ロスで刑事をしていた際に妻の浮気
が原因で離婚し、その後お酒に溺れて警察を解雇されたという過去の持ち主。現在は元妻との復縁
を考えていますが、上手くいかずにいます。このジェッシイとサニーがよく似ているんですよね〜。
どちらも離婚相手に愛情を残しているという背景だけで無く、温度感や物事を見る時の目の高さも
同じなので、二人の呼吸が自然に合うしっくり感が心地良かったです(^^)サニーに惹かれながらも
元妻の事を容易には断ち切れないという心情には、苦みや難しさが垣間見れると同時に、サニーが
ジェッシイのそんな気持ちを理解し、尊重するのが何とも大人で良いんだなあ〜(笑)サニーと同様
に自分の気持ちに自然に向き合おうとするジェッシイの姿には、すねに傷を持つ者の孤独感がほの
かに漂う感じでした。スペンサーの方が言葉数は多いけど、通じる面があるなあ〜とも。物静かな
一方で大胆な面を持つ人情派といったキャラかな〜。主役としてのジェッシイが楽しみです♪

脇役では、スペンサーの恋人のスーザンが出ていたのが、まず嬉しかったですね〜(^^)あとは
サニーのわんこのロージーの存在感もあなどれませんが(笑)、元夫のおじでマフィアの一員
なのに、サニーには思いやりをかけるフェリックスや友人のスパイクもそれぞれが良い持ち味を
出していました。元夫に子供が出来た事を知って落ち込むサニーにスパイクがかけた言葉は、
励ますでも無く、真実を容赦無くついたものだったので、寂寥感と共に印象深く残ったなあ〜。

付き人が殺害され、取り乱したエリンに犯人を捕まえて欲しいと頼まれたサニーは、ジェッシイと
協力しつつ、友人や知り合いを通じて情報を集めますが、徐々にエリンと付き人の関係や過去が
明らかになり、更にエリンの主演映画の制作費に対する投資の一件に繋がっていきます。サニーと
ジェッシイが事実を追っていく過程は、事件に関係のある人間の背景を地道に当たるという、オーソ
ドックスとも言える流れで展開していきますが、二人が事件に向ける視点が人間的に、そして味わい
深く描き出されていたし、展開の切り替えもシンプルかつスムーズ。事実がきちんと繋がっていく
のも気持ちが良いし、二人のロマンスやサニーと脇役達の絡み等全体的にバランスが取れた内容
で、人情を前面に出した結末まで、始終風情を出しながら、手堅くまとめられていたと思います。

簡潔な切り口から浮き彫りになる、心の機微や情感で深く読ませる良作でした。「初秋」もそうだった
けれど、人間味あるキャラが魅力的だし、読後は温かさや切なさが入り混じった情緒がしみじみと
残るんですよね〜。今後もこの読後感を求めて、パーカーのシリーズを読んでいきたいですね(^^)

虚栄 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 1-41 サニー・ランドル・シリーズ)虚栄 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ハ 1-41 サニー・ランドル・シリーズ)
奥村 章子

早川書房 2007-04
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  1. 2007/06/03(日) 23:59:44|
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美しい嘘

書店で衝動買いした一冊(笑)機を逃さない内に早速着手しました。こちらも続編アリだそうで(^^;)

車に轢かれかけた子供を助けた事で、マスコミに報じられたフリーライターのリドリーは、あなたは
私の娘ではないかと書かれたメモと写真を受け取った。リドリーは迷いながらも、同じアパートの
住人のジェイクの協力を得て調査を進める事に決め、やがて封書の送り主が判明するが・・・。

とりあえず・・・正統派のロマンティック・サスペンスを期待して読むと、外す内容だと思います(笑)
以下ネタばれアリの内容になりますので、未読の方はスルーかバックされる事をお薦め致します。

NYでフリーライターをしているヒロインのリドリーは、ある日車に轢かれそうになった子供を救い、
その事がマスコミに大きく報道されてから程なくして、「あなたは私の娘ではないか」というメモと
写真が入った封書を受け取り、その結果平穏だったリドリーの人生が変動していく事になります。
ストーリーはリドリーの一人称で進んでいきますが、両親の愛情に恵まれて育ち、社会的にも成功
を収め、優しさとシニカルな面を併せ持つ現代女性といったリドリーのキャラが持つ個性や感情が、
手厚く、丁重に描出されているのが出色だなあ〜と。事無かれ主義の両親やドラッグ中毒の兄、
そして亡きおじのマックスに抱く愛情や錯雑とした想いの中で、混乱や困惑に足を取られて、真実
を追う事を躊躇し、戸惑いながらも、現実と向き合う事によって、自分自身を探そうとするリドリーの
姿が細やかに浮き彫りになる様は、ある種のリアルさを感じさせるし、とにかく心情の描写が綿密
なので、強さや弱さ等人間的な部分で色々と感じ入らせる深みを持つヒロインといった感じでした。

ヒーローのジェイクは、リドリのアパートに引っ越して来たばかりの彫刻家。リドリーから事情を
聞かされて真相追求の協力を申し出ますが、それだけは無いミステリアスな部分が多く、徐々に
ジェイクの正体が明らかになっていきます。このジェイクが味わい深いキャラでしたね〜。本当は
私立探偵で、親に捨てられて里親の元で辛い思いをしながら育った過去の持ち主でもあり、自分の
出生に関する真実を追いかける内にリドリーに行き着き、意図的に近づいたわけですが、強くある為
にジェイクと名乗る事に決めたエピソードなんかもほろっとさせたし、冷静な立ち居振る舞いに深い
物悲しさが漂っているんですよね。自分自身を探し続けている人の孤独感がジェイクの静かな姿を
通して痛切に描き出されているだけで無く、相手に対して心を開く事の難しさの中に思いやりが感じ
られるのもまた切なく映った。直感的なものに始まり、理解や共感が通い合う事によって、形作られ
ていく二人の関係は愛情と共にどこかほろ苦いものを引きずるような感じもして、印象的でしたね。

封書の送り主を突き止めたリドリーは、ジェイクと共に会いに出かけますが、その男は三十年以上
前に殺害された女性の行方不明になっている娘の父親で、リドリーが自分の娘のジェシー・ストーン
である事を聞かせますが、話の途中で殺害されてしまい、以後リドリーは何者かに追われます。
ストーリーは、ゆったりとしたペースで進んでいきますが、緩やかな流れの謎解きよりも、リドリー
自身の内面の機微や両親や兄、マックス、そしてジェイクとの関係性を丁寧に掘り下げて読ませる
感が強かったですね〜。またマックスが運営していた非営利組織による、虐待されている子供を
救うという大義名分の下の人身売買に関する事件面については、親または子供から一方的に引き
離されて人生を決められてしまった被害者達の気持ちをより考えさせる重さや現実感があり、
展開の早いサスペンスの面白みとは違う興や重量感に惹き込まれて読み切った感じかな〜。
ページを追わせる力強さと滲み出る情感、そして読後に残る淡い寂寥感が印象深い一冊でした。

ストーリ上でリドリーが指摘していた通り、人身売買に関する諸々で釈然としない点が幾つか
あったのがちょっと気になるのですが、今年刊行された続編の「Sliver of Truth」の中で描かれて
いるとか?作風が独特なので今後も是非読みたいと思いますが、果たして翻訳されるのかな(^^)

美しい嘘 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ウ 20-1)美しい嘘 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ウ 20-1)
対馬 妙

早川書房 2007-05
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  1. 2007/05/21(月) 23:59:14|
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初秋

お友達からお薦め頂いたロバート・B・パーカー。タイトル数が多いので、お試しで読むなら・・・と
挙がったのが、ボストンの私立探偵スペンサーを主人公にしたシリーズの作品「初秋」です(^^)

離婚した夫から息子を取り戻して欲しいという依頼を受けたスペンサーは、早速仕事を片付けるが、
問題の少年ポールは不仲の両親の駆け引きの材料として使われていて、何事にも無関心なまま心
を閉ざしていた。そんなポールと一緒に過ごす内にスペンサーは彼を自立させようと決心するが・・。

ハードボイルドという事なので、チャンドラーやハメットの世界を想像していたのですが、意外にも
違った印象でちょっと驚いたり。淡々とした調子で描かれるストーリーは、主人公のスペンサーの
一人称で語られていきますが、まずこのスペンサーの人物像がとっても興味深かったです。寡黙な
探偵かと思いきやそうでも無いし、むやみやたらにマッチョさを誇示しないけれど、必要となれば
荒っぽくも出る、心優しきタフガイといった感じ。そして不思議なくらい自然体。特別に心情が掘り
下げられているわけでは無いのに、会話のやり取りを通して、スペンサーの想いや思考が的確に
読み取れるので、こうあるべきだという形に捕らわれずに、自分が気に入っている事をするのが
ベストだと言うスペンサーの持論にも強い説得力を感じたし、男性が描く男性の優しさというか、
情味にも骨太な男気があって、その重みがグッと良いんだな〜。シンプルに真理だけを突くやり取り
の中で、大切な事を語るのに決して多くの言葉は必要無いんだな・・・と深々と頷く事しかりでした。

相手に嫌がらせをしたいが為の道具にされているポールですが、大して物も申さず、訊かれた事に
対する返事は大抵肩をすぼめる行為で、否定も肯定もせずの無気力な少年そのもの。そんな姿が
痛々しくて、両親の事を何のためらいも無しに「嫌い」と言い切ってしまえるのがまた哀しかった
ですね(><)どちらの親にも愛されていないのを目の当たりにするのはどんな気持ちなんだろう
とポールの胸の内を思うと、これがまた辛い。母親が恋人と暮らす為にスペンサーの下に預けら
れて以降は、大工仕事をしたり、ボクシングを覚えたり等の経験を通して、自分の足で地を踏み
しめて生きていく事を学んでいきますが、言葉数が少ない分彼の涙にはホロホロとさせられるし、
15歳という年齢で誰にも頼らず、人生に責任を負う事を学ばざるを得ない事の過酷さと生気の無か
ったポールが、徐々に自分の人生を手中に収めていく過程が、スペンサーの人柄同様に飾らない、
率直な視点で綴られていて、しみじみとした感動がこみ上げると同時にラストにはじわっと貰い
泣き。静かな情趣が余韻として残る読後は優しい気持ちになれます。良いお話に出会えました(^^)

普段読んでいる本に比べると、描写は簡潔で色彩も慎ましい印象ですが、じわじわと心に染み入る
情感の深さが素晴らしく、温かい人情と一抹の哀愁に包まれる作品でした。成長したポールが
再登場するという「晩秋」も是非読みたいと思います。素敵本のお薦めに感謝ですm(_ _)m

初秋初秋
ロバート・B. パーカー 菊池 光

早川書房 1988-04
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  1. 2007/02/27(火) 22:45:40|
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永遠の沈黙

お薦めを頂いたので早速読んでみたハヤカワ文庫の新刊です^−^

ショッピングセンターの建設地で幾つかの白骨死体が見つかり、検屍官のジェイクは
恩師の頼みから調査に参加したが、その恩師は急死し、次いで恩師の家政婦も変死を
遂げた。発見された白骨死体の一つの身元が判明し、遺族が事実の解明を求めた事から、
ジェイクは何度か一緒に仕事をした事がある弁護士のマニーに協力を求めるが・・・。

主人公が弁護士と検屍官という事で、法医学(科学)的な面からのアプローチが
多いかな〜と思いながら取っかかりましたが、専門的な要素が多い割にはそれ程
小難しく描かれていなくてとても読みやすいし、ブランド品で完全武装したヒロイン
とぼさぼさの頭でファッション感覚ゼロのヒーローのコミカルなキャラクターと
サクサクした会話がストーリーを軽快に動かしつつ、全編を通して朗らかな雰囲気が
感じられたのが良かったです^−^ヒロインの愛犬や助手のケネスの存在も重く暗く
なりがちな検屍というテーマの中で明るい色付けになっていてナイスでした♪

恩師と家政婦の死に続いて、ヒロインが襲われたりヒーローの車に爆弾が仕掛けられ
たりと次々に事件が起こっていく中でマイペースな調査の結果、ショッピングセンター
の建設予定地にかつて建っていた精神病院内で人体実験が行われていた事実が判明
しますが、長年の親友として愛し慕ってきた恩師の知られざる過去が明らかになった
時のヒーローの気持ちを思うと切なくなったし、恩師の抱えていた秘密や実験の
被害者との悲恋と彼女が残した手紙に思いがけずホロリとさせられつつも、国益を
守る為に人命を侵すという事が正当化されていた事実の残酷さと沈黙の重さは
ずっしりと読後にも残って、深く考えさせられる面がありました(><)

人体実験の事実とはまた違った角度からサスペンスの真相へと辿り着きますが、
新たな事実の判明もアリで、最後まで気が抜けないペースで描かれていきます。
細かく見ちゃうと詰めの甘さを感じる部分もありますが、さっくりとした作風には
惹き付けられるし、コミカルな風味とふいに浮かび上がる切なさがとても魅力的な作品
でした。カップルとしての二人の今後も気になるし、(ラストにヒロインの愛犬に自分
の事を「パパ」と言っていたヒーローがツボv)シリーズものとして期待しちゃいます♪

永遠の沈黙永遠の沈黙
マイクル ベイデン リンダ ケニー Michael Baden

早川書房 2006-06
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  1. 2006/06/21(水) 00:00:39|
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