スーザン・エリザベス・フィリップスの新刊。遂に「シカゴ・スターズ・シリーズ」が完結となりました〜(涙)
恋人に裏切られて一文無しの状態に陥った画家のブルーは、たまたま知り合ったアメフトのスター選手の
ディーンの車に同乗し、ディーンが所有する農場に向かう事になった。なりゆきでディーンの婚約者の役を
演じる事になり、ディーンの両親や異母妹と一緒に生活を送る内にブルーはディーンに惹かれていくが・・・。
これで完結という事実をを意識しながら、寂しさや若干の緊張にも似た気持ちで取っ掛かり始めましたが、
冒頭の「ビーバー」に笑いつつ、やっぱりSEPらしい色彩やタッチは健在。魅力溢れるキャラ達やよどまない
話運び、そして機知とセンスが光るやり取りの数々。まじりっけの無い充足感に包まれる秀作でした(^^)
以下毎度恒例の
暑苦しい・しつこい・鬱陶しい長文レビューになります。大丈夫な方のみお進み下さいね。
ヒロインのブルーは肖像画家。恋人に裏切られて一文無しになった所にたまたま居合わせた、「シカゴ・スタ
ーズ」のQBディーンと行動を共にする事になります。さてブルーですが、ビーバーの気ぐるみを着用で登場
といきなり度肝を抜いてくれましたわ(笑)頭の回転が速く、鋭い舌鋒から繰り出される遠慮の無い受け答
えにもブルー独特の感性やテンションがあり、そのユニークさがとっても魅力的と言うか(^^)シュガー・ベス
にも似ているし、モリーを思わせるような感じも微妙にアリかな(笑)言いたい放題だけれど相手の気持ちや
感情を気にかける優しさや思いやりを持っていて、でも他人とは深く関わらず、一匹狼的な生き方をしている
姿に複雑な生い立ちの影響が窺えたりとブルーのキャラに奥行きが見て取れましたが、温かさや寂しさが
ないまぜになった表情は明るく魅了するかと思えば、切なく映ったりもしましたね。その一方でディーンや
ニタと交わす会話は小気味良くて楽しいし、ジャックへの崇拝振り(笑)にはニンマリとさせられたりも(^^)
そして強気な態度の下に隠したブルーの繊細さやナイーブな一面が、感情の動きと共に丁寧に描き出さ
れていて、深く掴みながら、心に染み入るな〜と。芯の通った強さと柔らかく脆い部分のバランスが◎。
個性的かつ飾らない雰囲気や等身大の温度感が好感度大。やっぱりSEPのヒロインは素敵なんですよね。
ヒーローのディーンは「シカゴ・スターズ」のスター選手。テネシーの農場に向かう途中でブルーに出会い、
成り行きで婚約者の役を演じて貰う事になります。前作時のやんちゃ系な印象と比べると成長した感が
ありますが、おしゃれで愛想の良いチャーミングなゴールデンボーイ振りは相変わらずでしたね〜(^^)
ユーモアのセンスにも長けていて、ドーナツをかじられてもつい許してしまうような(笑)、人好きのする大
らかな物腰は華やかで魅力たっぷり。初めこそぎこちないけれど、ライリーに見せる良き兄ちゃん振りや
ブルーの突飛な個性に翻弄されながらも魅せられていくディーンの姿が明るく生き生きと輝く感じも凄く
好きだなあ〜。またブルーのように親に顧みられずに傷つけられてきたディーンの心に根ざした難しさに
も奥深いものがあって、ブルーへの愛情や両親との対峙を絡ませながら、ディーンの感情のもつれが解
けていく流れがエモーショナルに描出されている中、ディーンが不器用なりに自分の内面に向き合って
いく様には見守るような気持ちにさせられましたね。ジャックとエイプリルとライリーの三人の輪に入れず、
外側から見つめているシーンなんてグッときたりも。成功して、一見充実した人生を送っているように思
えるディーンの心模様を機微細やかに読ませつつ、過去のSEPのヒーローズ同様に人間味を感じさせる、
生身の部分に心を揺さぶられると同時にそのあたりが最も印象深く残るんだなよな〜と再実感しました。
ブルーとディーンのロマンスは、ホットさは抑えめになっている感じですが、打てば響くようなやり取りを
交えつつ、共通するものがあり、また似た者同士だからこそ相手の気持ちがわかる事や二人の間に通い
合う理解や共感にも重みが感じられたかな〜。愛情に背を向けようと思い悩みながらも踏ん張ろうとする
ブルーと愛情を認める一方でブルーを信頼出来ず臆病に構えてしまうディーンの不器用で切ない感情の
やり取りを通して、問題があるのはブルーだけで無く、ディーンもまた同様である事を映し出しつつ、男女
間のロマンスだけで無く、人間的な深みがより前面に出ているように思えましたね。ブルーが描いた壁画
や最後の最後にディーンが自分自身の臆病さを認める下り等のエピソードも印象的。まさに秀逸でした。
ディーンの両親のジャックとエイプリルのロマンスがサイドストーリーとして盛り込まれていましたが、これ
がまた上手いんだな〜。二人がしてきた事や逆にしなかった事を思うと痛々しさを覚えつつ、しっかりと地
に足を着けて生きているエイプリルと親として子供にどう接するのかわからない不器用なジャックのキャラ
それぞれが味わいがあって○。ライリーの存在を間に置きながら、二人の距離が狭まっていく過程もしっと
りと自然なんですよね。過去作品で描かれたサイドロマンスとは一風違うカラーがとても良かったです(^^)
そして脇役陣ですが、ライリーとニタで決まりと言えるかな〜。この二人の役割は大きかったと思います。
まずライリーはディーンに抱く思慕なんかもいじらしくて、愛情に飢えた傷つきやすさに一途さや純粋さを
織り交ぜながら、子供らしい伸び伸びとした表情が綻ぶ様が◎。ジャックとの親子関係を始めとして大人達
との繋がりも入念に描かれていたと思います。続いてニタですが、口の悪い嫌われ者の意地悪ばあさんか
と思いきや、実は孤独な生活を送る善意の人でもあり、毒を吐きつつ一癖あるキャラがナイス。ブルーや
ライリーとの関係も微笑ましかったですね。あとアナベルとヒースがちらっと再登場したのは嬉しかった(^^)
ディーンの婚約者として農場で過ごす事になったブルーは、ディーンの家族との交流を深める一方で段々
とディーンに惹かれていき、やがて二人は関係を持ちますが、ニタの誕生日パーティーの後に町を去ろう
と決めたブルーにディーンはシカゴでの同棲生活を持ちかけるものの、ブルーはその提案を撥ねつけます。
ストーリーはインパクトのある導入から(笑)、切れの良い明るい調子で展開していきますが、過去作品の
キャラ達を交えたスタイルに比べると、幾分こじんまりとした感じはあるものの、メイン、サイドの両ロマンス
に家族の絆を緊密に絡めた内容は深く確かに心に響いてくるし、ブルーとディーンを筆頭に登場キャラ一人
一人の鮮やかな個性と存在感、そして細やかな感情描写も申し分無しでしたね。ブルーとディーンが交わ
すウィットに富む、息の合った掛け合いや二人の間に流れる様々な感情、ストーリーに彩りを添える個々の
エピソード達等作品のピースのどこを取ってみてもSEPならではの透徹した温度感が生きていて、優しさや
切なさ、温かさが散りばめられた世界は極上そのもの。SEPの作品はいつでも幸福感で一杯に満たしてく
れるんですよね(^^)また今作では(アナベルとヒースを除いて)過去作品のキャラ達の登場が見られず
でしたが、それがまた自然な感じと言えるかな。取って付けたような無理な使い方をせず、このシリーズ
にもちゃんと時間が流れている事を感じさせるあたり(「あなたが〜」のアニー祖母ちゃんが「あの夢〜」の
時には亡くなっていたように)もまたSEPらしいな〜と感慨に耽りつつ、「スターズ」は私にとっていつでも
大好きで、いつまでも変わらず特別な存在であり続けるシリーズなんですよね。感無量の優秀作品です(^^)
新作は来年の2月に発表予定の「What I Did For Love」。新しいシリーズ物という話もあるのでこれ
また楽しみ(^^)翻訳がどうなるのかが気になる所です。あと同じ時期に「Glitter Baby」も改訂&再出版
されるとの事。SEPもいよいよ新作待ちの状態になってしまいましたね。嬉しい反面寂しさもアリだったり(笑)
- 2008/08/01(金) 16:55:29|
- スーザン・E・フィリップス|
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SEPの新刊。「レディ・エマの微笑み」に登場していた、フランセスカとダリーの若き頃のお話です。
類まれな美貌を持って生まれたフランセスカは、社交界の寵児としてもてはやされていたが、母親の
突然の死と同時に財産を失ってしまった。映画出演の誘いに乗って米国へ渡ったものの、撮影に耐え
かねて逃げ出したフランセスカは、通りかかったプロゴルファーのダリーに拾われ、行動を共にするが・・・。
いや〜、ストレスが溜まりました(^^;)これが他の作家の作品ならまだしも、激愛作家のものとなると、
凹み度も倍増ですね(苦笑)いくら昔の作品とは言え、もうちょっと何とかならかなったのかな〜と。
以下良い事は書いていませんので、未読の方やこの作品をお好きな方はスルーかバックして下さいね。
高名なデザイナーの祖母と社交界の人気者の母親を持つヒロインのフランセスカは、各界の著名人
に囲まれて育った令嬢ですが、ある日母親が急死し、財産が底をついた所にパーティーで知り合った
映画監督に気に入られ、映画に出演する為に渡米します。まずこのフランセスカがどうにもこうにもダメ
でした・・・。美しいだけで頭が空っぽの母親に、徹底的に甘やかされて育った事を割り引いたとしても、
あまりに無知で浅はか。経済的に貧窮すれば、好きでも無い金持ちの求婚者を利用しようとするし、
悪い事は全部他人のせい。見苦しい事この上無い、勘違いも甚だしい言動を繰り返す様にはいい
加減ウンザリしっぱなし(萎)SEP作品のヒロインズと言うと、基本的に心優しい頑張り屋さんな一方
で自己評価が低いタイプが多く、そんなヒロインズが葛藤の果てに自分自身の在り方を見出していく
姿に共感や感動を覚えるわけですが、それもまたキャラが魅力的と言う大前提があってこそだし、身重
のまま無一文になって初めて、フランセスカが生きていく上で大事な事を悟り、その後シングルマザーと
して苦労しながら、全国区のキャスターになったとは言え、それまでの言動が目に余るせいか、全然心
が動かされないんですよね(苦笑)苦労している下りがもっと掘り下げられれば、また見方も違ったかも
知れないけれど、そのあたりも大して描かれずだったし、心理面の描出も浅くて、フランセスカの精神
的な成長や変化も上滑りと言うか、印象が薄いように感じました。激愛作家という事と私の甘っちょろ
い性格も手伝って、何かしら美点や魅力が無いものかと思いましたが、前半の印象を覆す程のもの
はあらず・・・(笑)フランセスカが家出少女達を見つけては救済するというエピソードも生かされていな
いしな〜。とにかく魅力がわからなかったです(^^;)とりわけ上巻は耐え難い(爆)SEPらしかぬキャラ
造形に驚くばかりですが、何もヒロインに限った話では無かったという事に更に凹んだりも(苦笑)
ヒーローのダリーはプロゴルファーで、15歳の時に父親の虐待から逃れて以後親代わり兼キャディー
のスキートと共にツアーを回る生活をしています。フランセスカに続いて、このダリーも何だかなあ〜と。
父親の虐待、幼い息子の死といった事に精神的に縛られていて、本気で人生に向き合わずに生きて
いるという設定ですが、薄っぺらなヒーローとでも言うか(^^;)まずフランセスカに妻帯者だと知られた
時の対応や言い分の聞き苦しさにゲンナリ。妊娠させた事も含めて無責任極まりないし、更に10年
後、テディが自分の子供だと知った時の行動には怒るやら呆れるやらで、ショックや怒りのあまりとは
言え、何よりも巻き込まれたテディが可哀想で、テディの存在を知らされなかった事に対する同情心も
全く起こらずじまいでしたね。いい歳になっても、人生に迷いを感じているという部分は、 これまで
読んできたSEPのヒーローズと共通するものがあるのですが、頭も良くて才能に恵まれている一方で
肝心な事がわかっていないと言う、「可愛いおバカさん」な要素も見られずだし、加えて元妻のホーリー
・グレイスの存在がダリーのダメさ加減を増長させているように映ったかな〜。ダリーとホーリー・グレイス
の関係は、私的にどうにも理解出来ずじまいで、ダリーのキャラにとってマイナス要素の一つのように
思えたりも。それでもテディと親子関係が築かれていく過程は良かったし(テディの魅力が助けとなって)
特に終盤にはダリーのキャラも厚みを増した感がありますが、やっぱり好きにはなれなかったです(笑)
さて脇役陣ですが、まずダリーの妻のホーリー・グレイスもダメでした・・・(苦笑)↑でも書いたように、
息子の死を機に夫婦としてはやっていけなくなったものの、家族として離れられない特別な存在だから、
離婚はしないと言う、二人の関係も理解が及ばずで、何だか居心地が悪いような気もしたなあ〜。
生い立ちや息子の死等の背景がキャラに感情移入させるわけでも無く、フランセスカとダリーの間に
入って偉そうに口を挟む様は、正直かなりウザったいものを感じました(^^;)よっぽどいい気な言動が
目に付いて、主役の二人同様に好感の持てるキャラでは無かったですね。唯一の救いはテディだけ
かな(笑)テディを囲んでのエピソードはスキートとの関係も含めて心が温まる感じで、読ませるものが
ありました。ホーリー・グレイスとすったもんだしているゲリーも個性があるのはわかるけれど、いま一つな
感じだし。キャラの配置や絡ませ方も何か空振っているように思えて、テディ以外は見所無しでしたね。
子供が出来た事を告げずにダリーと別れたフランセスカはラジオ局に就職し、雑用係を経て自分の
番組を持った事がきっかけとなり、十年後にはテレビキャスターとして大成功を収めますが、ある日
ホーリー・グレイスの元に預けていた息子のテディがダリーと会い、ダリーはテディが自分の息子である
事に気がつきます。まずフランセスカの生い立ちに関しては、実在の著名人を登場させながら描かれて
いましたが、冗長そのものな内容で、とりわけ母親の若かりし頃の話なんかは要らないように思えたし、
延々と我がまま三昧な言動を続けるフランセスカを読まされるのは、かなりしんどかったですね(萎)
あとはキャラの魅力の無さに尽きるかな〜と。フランセスカとダリーの再燃ロマンスも、二人の間に通い
合うものが稀薄で、感情的に盛り上がらないんですよね。終盤の全米クラシックの下りは流れに張り
があって、緊迫感とかもそこそこ上手く出ていたとは思いますが、でもトータルで見ると、構成もイマイチ
だし、ストーリーに面白みが感じられず、深みの無いキャラは致命的なマイナスと言えて、テディ以外
は魅力や売りポイントを見出せずじまい。初期のものとは言え、SEPらしかぬ残念な作品でした(^^;)
さて「Hot Shot」と「Honey Moon」がMIRAから翻訳されるそうですが、私的に期待しているのは
「Honey Moon」です。またしても仰天な邦題に言葉を失うのかという事も気になっています(爆)
- 2007/12/28(金) 23:49:33|
- スーザン・E・フィリップス|
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